キューバでのアノールトカゲの調査

 東北大学の河田先生のグループとキューバのアノールトカゲの視覚の研究を昨年始めました。研究を進めるとアノールの種が生息する環境の光に視覚を適応させていることが予想されました。そのため今回はそれぞれのアノールの種が生息する環境光、厳密にはそれぞれの個体が見ている光を測定することをメインの目的としてキューバに調査に行きました。その様子を紹介します。

キューバのアノール調査

調査隊

東北大学

 河田先生: 隊長です。キューバ5回目

 アカシくん: キューバ4回目

 バレンティンくん: キューバ2回目

キューバ研究者

 トニーさん: 世界トップのキューバ爬虫類両生類の研究者。日本にも計2年程滞在して研究

 ルイスさん: 世界トップのキューバ爬虫類両生類の研究者。キューバの動植物に精通

総研大

 私: 初キューバ。光環境測定担当

ハバナの交差点で車軸が折れて立ち往生しているクラシックカーを見かけました。

荷物が行方不明で立ち往生している私たちを見るようで複雑な心境でした。

調査の概要

この男6人のチームで10日間程調査を行いました。

調査はハバナを出発してビニアレスへ。ビニアレスから海辺のホテル。このホテルを拠点として西側の半島を調査。その後ソロアへ移動。そして再びハバナに戻る順で行いました。

ハバナに到着

成田空港からカナダのトロントを経由して、キューバのハバナに到着。いつも通り荷物が出てくるのを待っていると....、荷物が来ない。。。測定機器が入っている荷物がないと調査ができません。どうやらトロントで行方不明になっている模様。

荷物問い合わせ窓口で、不安に待つ

荷物がもしも届かなかった場合に備えて、ハバナ大学のトニーさんの所に向かい準備を進めました。ハバナ市内を歩くとクラシックカーだらけ。まるで映画の世界のようです。

ハバナ大学正面。威厳を感じます。

2日遅れで荷物が到着。セキュリティチェックが破られ中を開けられていましたが、測定機器はすべてありました。これで調査に行けます。

ビニアレスでの調査

ハバナからビニアレスへ車で移動

荷物が届き、いざ調査へ出発!

男6人が乗っても大丈夫なバンで移動です。

ビニアレスでは始めにこの山の斜面森で調査しました。

ここでは森林内部にAnolis allogusA. mesterei, 周辺部にA. homolechisがいます。

森林内部の様子。

デジカメの性能で明るく見えますが、森林内部は外に比べてかなり光が弱く、気温も低くてよいのですが、蚊がたくさんいます。

ビニアレス森林内部のアノール

ビニアレス森林周辺部のアノール

種ごとに喉の皮(dewlap)の色が異なります

光環境の測定

PC、分光光度計、光ファイバケーブルを森林内で接続してアノールが見ている方向の光を測定します。写真では置いていますが、このセットを両手に持って荷物を背負って足場の悪いところを歩き回って測定しました。足腰の鍛錬になります。

測定中にお客さんも

ビニアレスは石灰岩により大地が形成されており、水の浸食によって洞窟が形成され、川が流れています。

洞窟には洞窟に適応したアノールが生息

弱い光への適応のためか眼が大きい

水中にかなりの時間潜って獲物を捕食できるそうです

河川には水棲適応したアノールが生息

夜間採集

調査の日はおおよそ次のように進行します。朝7:30朝食。8:00~8:30に調査に出発。昼食は持参したサンドイッチかホテルが近ければ戻って食事。午後6:00くらいまで調査。ホテルに戻って夕食。夜9:00くらいから夜間調査。夜間調査の目的は眠っているアノールを捕えることです。

外灯の下のカエル

ヘビの1種。キューバに毒蛇はいません。

メインのアノール

こちらはアノール

木の上で眠るクラウンジャイアントというエコモルフの種

捕獲され間近で見ると名前の通りに

大きいです

翌日は朝から森の斜面にある1部開けた場所

開けたところにはA. sagrei, 数m横の森の中にはA. mesterei、移行帯にはA. homolechisがいます。ここではほんの数mの違いによる環境の違いとそこへの適応を肌で感じることができました。今回の調査の中で最も大きな収穫の1つです。

メスは頭に色がついている個体もいます

調査の昼食時の1コマ

キューバの犬がやってきました。

おねだり。指が長い。

ひざにも乗ってきて、かわいい

キューバの西部の調査

ビニアレスからキューバの西部へ移動

海辺のホテル

このホテルを拠点に西部を調査しました。

この地域唯一のホテルで、とても蚊が多かったです。

西部での調査の対象となったA. quadriocellifer.

この種は西部の開けて明るい場所から、暗い森の中まで生息しています。明るい生息場所の集団と暗い生息場所の集団で視覚の違いはあるのか?それを調べるためにサンプルと光環境データを収集しました。

この遊歩道はサンゴの化石が風化して穴だらけになった土地にあり歩きにくいです。暗い森林内部ですがA. quadriocellifer はいます

西部の調査: 自然保護館の裏の遊歩道

A. quadriocellifer まだ幼体。

キューバのフクロウも私たちを興味深そうに見に来ました

オカヤドカリもいました

キューバの西部の調査

自然保護館から半島の先端に調査を行いながら移動

道路脇に車を停め、森を調査します

森の中にはA. quadriocelliferばかりでなく色鮮やかなオカガニもいました

このような開けた場所にもA. quadriocelliferはいました

世界最小のハチドリ

グリーンアノールに近縁な種

ここまで開けるとA. quadriocelliferは見つかりませんでした

大きなイグアナ

キューバでコウモリ以外の数少ない哺乳類

実をつけたサボテン

キューバの西部の調査: 夜間調査

突然の明かりに驚いたヘビ

ちょっとボケてますが、巨大なオカガニ(靴と比較)

暗闇にウマ

キューバはコウモリ以外の哺乳類がとても少なく、そのためなのか爬虫類や甲殻類が多様化している印象を受けました。

ソロアでの調査

海辺のホテルからソロアへ車で移動

馬車

移動中に見ているとキューバでの主な交通手段は以下になります

自転車

ソロアのホテルに到着

ソロアでは深い森の中のA. allogusと開けた場所に生息するA. sagreiのの生息光環境を測定することが目的です

雨がやんで、トニーさんがナイスキャッチ

雨が止んで調査に出発

到着直後に雷と豪雨

ホテルの犬も調査についてきました

見事な擬態のアノールの近縁種

しかし、ルイスさんの目には丸見えです

ルイスさんがナイスキャッチ

ソロアでの夜間調査

葉の上で眠るアノール

ヘビは夜活動している?

またアカシくんがヘビを発見

バレンティンくん発見の大きなヤスデ

車から見る車はクラシックカー。

大変でも楽しい調査が終わってしまい、少し寂しい気分です

ハバナへ車で移動中、赤ちゃんをつれた母親がヒッチハイクで乗ってきました

昼食の食堂にもA. homolechisがいました

調査が終わって昼食キューバ料理です

一夜明けて、少しの晴れ間にA. sagreiの環境を測定

調査が終わりハバナへ

 

古い物では1900年代の車があるとか。

古い車はエンジンを乗せ換えて走っているらしいです。

最後の日はハバナ大学のトニーさんのところで

サンプル整理。時間がかかります。

最後にクラシックカータクシーに乗りました。

格安ですが、外から見ている方がいいです。


最終日の夕食に河田先生縁の方々も集まり、ほのぼのとした会食となりました。日本を遠く離れたキューバでも皆が集まってくる、これも河田先生の人柄ゆえなのだと感じました。心のこもった共同研究、いつも心がけてはいますが今回の調査を通じてそれをよりいっそう感じ、また大切にしていきたいと思いました。もしかするとそれが今回の調査の最も大きな得た物だったかもしれません。名残惜しい気持ちのなか、翌朝の5時に空港へ向かいました。

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